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2008年5月13日 (火)

瓦屋根

瓦屋根の葺き替え工事をしたのは2006年の1月のことでした。その夏、発注した時に「いつ来てくれる?」と訊くと「10月」という返事でした。その頃はまだパリ近郊のアパートに住んでいたので、工事の間はどこへも行かず田舎の家に住まないといけないねと家内とも話し合いました。

しかし、10月が来てもいっこうに知らせがありません。事務所に電話すると、秘書の女性しかおらず、スケジュールについては親方しか知らないとまるで子供のような返事です。やっと親方を捉まえ、「10月と言ったじゃないか」と詰め寄ります。「それは、予定の話で、工事いうもんは予定通りゆくためしがないんですよ。」まるで現場を知らない客を非難するような言い草です。「いま抱えてる大きな現場で問題が生じて、現場主任の手が離せないので、もうしばらく待ってほしい。」

それからも何度催促の電話を掛けたことでしょう。そもそも、この親方を選んだのは家内が昔住んだ町の古い家をこの親方が買い、顔見知りだったということと、市役所から信頼を得て仕事を貰い、この地方のあちこちで屋根を修復している良心的な職人だという評判からでした。
Tuilesetardoises 「旅行にも行かずに待ってるんだよ。工事の間は家に泊まらないといけないから、いつごろになるか教えてほしい。」「留守でもかまわないですよ。工事はやれますから。」

瓦屋根は路地に接し、市役所に申請して路地に足場を組む許可を取ってありました。「冗談じゃない。足場を組み、屋根をぽっかり開け、まるで、泥棒さん、入ってくださいと招くようなもんじゃないか。」あちこちで空き巣や強盗のニュースが絶えないきょう日です。「ああ、そうか。」親方の答えはまるで他人事でした。

「現場主任をひとり雇わなくちゃいけないな。近いうち見つけるから、しばらく辛抱してください。」個人住宅の工事の伝統的発注の仕方は見積書にOKとサインし送り返すだけです。納期に関し、なにも条項がなく、業者の都合に全面的に任せる形です。見積金額の有効期限だけは3か月と記され、業者の都合で工事が遅れる場合は、物価上昇に因る損失は業者が負うと但し書きがついているので、いくら遅れても、完工後の請求書は見積金額どおりなんだなと了解していました。

「明日、行くから。」正月の気温が零下7℃の寒い日に電話が掛ってきました。待ちわびていたことなので四の五の言わず、その日のうちに家を移りました。翌朝小型トラックで現場主任のマルセルと若い見習いが二人ちゃんと姿を現わしました。その週は毎日が、氷点下の日で、鼻水が氷り、雪がちらつくなどし、一日は田舎の道の路面が凍結し、三人は来ませんでした。その一日を除いては毎日、朝と午後、熱いコーヒーを出して元気づけ、職人さんたちは陽気に冗談を飛ばしあいながら働いて、正味5日で瓦屋根の葺き替え工事は無事完了しました。

ここでいう田舎の家とはフランスはヨンヌ県の叢林亭のことです。詳しくはhttp://www.sorintei.comをご覧ください。

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