« 試練の始まり | トップページ | 屋根職人の道具 »

2008年5月16日 (金)

工事開始

投稿者「叢林亭」:http://www.sorintei.com

親方が現場主任のリュシアンを連れて挨拶に来たのは、長い冬が明け、雪割草が白い顔をのぞかせた3月も中旬のことでした。「来週から始めるから・・・。」そう言い残して二人は帰ってゆきました。

しかし、リュシアンが実際に二人の若い衆を連れて現われたのは、それから2週間後のことでした。「田舎に用事ができて行かねばならなかったので・・・。」リュシアンは一応言い訳をしました。この際、1・2週間の遅れなど取るに足りない。1年と3か月待ったのだから。

いよいよ、スレート屋根の葺き替え工事です。どうやって葺くのか?シャトーの広大な屋根やノルマンデイー地方の民家で垂直の壁をスレートで葺いてあるのを見るたびに興味をかきたてられました。

Cutter1 最初の2週間は、足場を組み、古いスレートを剝して降ろし、傷んだ垂木を取り換え、小舞を打ち付けて行く準備作業に費やされました。

リュシアンが連れてきた二人の若い衆は、ひとりはずんぐりとお相撲さんのように肥ったロマン、もうひとりはリュシアンの息子でした。後に亜鉛板の加工になると親方の息子が来ましたが、大抵は、初めの三人が朝9時頃やってきて、昼休みを1時間取り、夕方4時には片付けて帰ってゆきました。週35時間の法律を順守しているのです。親方の事務所は同じヨンヌ県でも北の端にあり、60km離れています。「実作業の時間が短くてね・・・。」リュシアンが複雑な笑いを浮かべながら言いました。

スレート(フランス語でアルドワーズ)は天然の粘板岩で、泥土が川底に堆積し圧力を受けて出来た変成岩の一種です。薄板状に割れやすく、昔は子供が筆記用の石盤として学校へ持って通いました。最近では、ちょっと田舎風のレストランが趣を出すのに、その日のメニューをアルドワーズに書いて客に見せます。

リュシアンたちが持ってきたスレートは長方形の規格のサイズに切られたスペイン産の黒味が勝ったものでした。フランスではロワール河の河口近くのアンジェ周辺で採れるアルドワーズが最高級とされ、晴れた夏の日には青灰色の美しい輝きで屋根を際立たせます。しかし、最近は採り尽くしたといわれ、値段が高い。予算に限りがあったけれども、天然産がいいという家内の要求を容れ、親方はスペイン産を購入していたのでした。

「小舞と小舞の間隔は11センチだよ。」最後の日にリュシアンは余った200枚近くのスレートを親方に内緒で譲ってくれ秘法を伝授してくれました。長方形のサイズは32cmX22cmですから縦方向の約3分の1です。

スレートの止め方は2種類あって、上辺近くに穴を開け頭の平たく大きな釘で止めるのと、小舞に打ち込んだピンに下端を引っ掛けて止める方法があります。屋根の稜線部は別ですが長方形のスレートの縦3分の2を重ね、ちょうど魚の鱗のように葺いてゆく。露出して雨を受ける部分は全体の3分の1でしかないのです。接合部から侵入する雨は重ねた下のスレートが受けて流します。

Trapezoidal ようやく3週目に入ってスレート葺が始まりました。まず屋根の稜線部から葺いてゆきます。面と面の接合部で、ここがいちばん難しく、職人の経験と技が求められる作業です。「面と面の接合部が直線である」と単純に言っても現実は曲がったりでこぼこがあり、それを見分けながらカンと経験で雨が浸入しないよう葺かねばなりません。稜線部のスレートは写真のカッターで台形に切り揃えます。これはすべてリュシアンがやりました。

この記事はゲストハウス「叢林亭」に関するものです。http://www.sorintei.com をご覧ください。

|

住まい・インテリア」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1025232/20987290

この記事へのトラックバック一覧です: 工事開始:

» 出会い系攻略情報ブログ [出会い系攻略情報ブログ]
出会い系サイトじゃいつまで経っても女の子と会えないなんて思っていませんか!?女の子と会うことなんて実は簡単なんです!楽に女の子をGETする攻略情報を伝授しちゃいます! [続きを読む]

受信: 2008年5月16日 (金) 22時23分

コメント

コメントを書く