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2009年8月 6日 (木)

閉じ込められたトラ

投稿者:そうりん亭ジャーナル「りゅーらる」:http://www.sorintei.com

いつもならキッチンのガラス戸をガリガリ掻いて中を覗き、開けてくれという顔を見せるのだが土曜の夜、そして日曜の夜もトラは姿を見せなかった。

Storabuvant2c 八ヶ月間行方不明になる前から、トラには本宅があり、ウチは別宅と解っていた。時々姿をくらまし、脚は泥だらけ、白い胸毛を真っ赤に血で染めて飛び込んでくるなりガツガツと飢えを満たすことも何回かあった。

たいていは週末、土曜と日曜は、姿を現さなかった。妻はトラの主人がサラリーマンで土日は家から出さないのだろうと推理していた。トラの生家は我が家と路地を隔てたお隣で、いつぞやお隣のご主人と奥さんに、トラが小さい時、町内の誰にあげたのか訊いたのだが、勝手に出て行ってしまったという返事だった。

車に刎ねられたか毒を盛られたか、てっきり死んだものと思い込んでいた八カ月の後、突然トラが戻ってきたことは以前このブログに書いた。喧嘩を買って出るほど威勢のよかったトラは、去勢されてすっかり怖がりネコに変貌した。朝ウチへ来て食事をし、日がな一日寝ていることが多くなった。

妻はオス猫は元気が良すぎると喧嘩で傷だらけになるし、特にトラは近所の牧場などへ出かけて首の周りにチックというダニの化け物に吸いつかれたまま戻るので飼い主が外へ出ないよう去勢したのだろうと推理した。

去勢されトラはどこか寂しげで、我が家の居心地が良いのか次第に夜もウチで寝るようになった。昼寝をして夕方起き出すと元気が出て、庭に棲むツグミを狙ったり、掃除をしている妻や私にじゃれついたりする。特にヒモの類が好きで1メートル近くもジャンプする。

その日、金曜日の夕方のことだが、起き出したトラは庭先に座ったまま思案顔で、これからどこへ行こうかと迷っている様子だった。私たち夫婦は買い物から帰ったばかりで、車にはまだ降ろしきっていない荷物が積んであった。

車で出かける私たちを、毎回、トラは遠くから前脚を行儀よく揃えて見送るのだった。クロも昔よくそうして出かける私たちを寂しげに見送った。

トラの遊び相手になってやろうと近づいた瞬間、身を躍らせてトラは植え込みの下へ身を隠した。そして、そのまま姿を消してしまった。

その3日ほど前、右前脚を3センチほど皮がそげ
が見えるほど怪我をし、妻が骨に細菌が入ると大変だと心配して10km先の獣医さんのところへ車で連れて行った。自然の中で育ったネコにとり車で移動するなど想像を絶する体験に違いない。恐怖以外のなにものでもないかもしれない。

走り去る風景を見ながらトラは悲痛な鳴き声をあげ、犬がするように口を開け舌を出して、ハッハッハッハと切迫した呼吸をした。獣医さんは、それはストレスのためだと言った。抗生物質を注射してもらい傷は治った。

トラの姿が消えたと頭の隅で感じながら、私は車に残った買い物の袋を両手に提げ家に運び入れた。その日の天気予報は夜、激しい雷を伴う夕立で、すでに遠雷が聞こえていたので、車をシートで覆った。

月曜の午後になっても
トラは姿を現わさない。こんどは週末だけでなく、ちょうどバカンスへ出かけようとしているところへトラが戻ったので、そのまま車に乗せ、バカンスへ連れて行ってしまったのだろうと妻は推理した。

そうとでも解釈しなければ、あれだけウチに居着く様子を見せていたトラが姿を現さないのが理解できない。
私は妻に言ったものだ。

「金曜の夕方、トラはどこか思案顔をしてたね。飼い主がバカンスへ出かけるのを知っていたのかな?自分も行こうか、どうしょうか、なんて考えてたのか。それにしても、タイミングよすぎるようだ。」

月曜の夜は翌朝回収に来るゴミ箱を門の外へ出す。最近は野菜クズなど自然分解するゴミと分解しないゴミを分け、分解するゴミは澱粉から作った袋に入れて出す決まりになっている。

プラスチックの小袋に仮に入れておいた野菜クズを、分解する袋に詰め替える作業を門の中でやり、ゴミ箱を門の外に出した。庭を戻りかけた時、ふとネコの鳴き声を聞いたような気がした。隣の家から聞こえてきたような、
どこか遠い、感じがした。

隣は現在空き家同然で雌猫が3匹とクロが出入りし、家主が時々餌を与えに来る。Skurosouboisc だが、夜猫の鳴き声を聞くのは初めてだ。ドアにはネコ用の出入り口が切ってあるので、そこからクロが出てくるか見たが猫の影はない。

鳴き声は続いている。不審に思い耳を澄まし、はっと気がついた。そうか、車の中だ。車は3日間使わなかった。私は、突然ネコの死骸をイメージした。大急ぎでシートを剥がした。中で救いを求め動いているのはトラではないか。

丸3日間トラは車に閉じ込められていた。飛び出すと狂ったように庭を走り回った。走る元気はある。家に入っても走り回った。
トラが最初にしたことはネコのトイレを使うことだった。3日間我慢していたのだ。庭は暗いし、それよりも確実で清潔なネコ用トイレを使ったのには驚いた。

妻は、車の中じゃしていないよ。ボクは清潔だよとわれわれに見せるためにトイレでしたのだと言うが、それはどうだか?

ともかく、あれだけ怖がっていた車に上がり込んでしまったトラ。まさか、車に乗り込んだなどと想像もできなかった。シートを被せるとき、そんなことを考えもしなかった。

最初の晩は雷が鳴った。翌日から暑くなった。その車に飲まず食わず、トイレも行かず3日間閉じ込められていた。太めの腹がへこんでスリムになった。左上のバケツから水を飲むトラ
の写真は、事件の3日前に撮ったもので腹が出ている。

ネコの寿命を18年とし、人間の90歳に換算すると、
5倍の時間差になる。ネコにとっての3日間は人間の15日間にあたる。

トラが車に閉じ込められて過ごした時間はどんなだったろうと想像する妻に、私は、「ちょうど軍隊なんかで懲罰に狭く暗い小屋に閉じ込めるじゃない。あれを15日間やられたと同じようなもんだろうな」と言った。

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コメント

こんにちわ。
なかなか迫真のドラマですね。
トラくん結構ドラマチックなネコ生送ってますね。
3日も閉じこめられて、それは不安だったでしょうね。
それにしても出て直ぐちゃんとトイレでするのは感心ですね。
人間以上かもですね(^_^;)
はるかフランスのトラくんに幸多きネコ生を(=^..^=)ミャー

投稿: | 2009年8月10日 (月) 09時39分

あ、KOZOUでした。

投稿: KOZOU | 2009年8月10日 (月) 09時40分

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