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2011年3月 6日 (日)

夏の山脈 1 機内で

                    

         新連載 「夏の山脈」         

              その1

 白いちぎれ雲を浮かべた空が無限に広がっている。その下にグリーンの大地が見えた。

 機体がどんどん高度を下げ、卵型の窓を通して、粘土をヘラで搔いたようなベージュの土と濃い緑の樹木で縁取りされた河が、モスグリーンの水を湛えてゆるやかに蛇行するのが見えた。

 「サスケッチワン・リヴァーですね?」

 陽一は隣のオランダ娘に問いかけた。

 「河?」 娘は窓をのぞきながら呟いた。

 「そう。エドモントンの街を大きな河が横切ってますね」

 陽一はエドモントンがカナダのどの辺にあるか世界地図で調べた時に、サスケッチワンという河が街を貫いているのを見た。ガイドブックには、この河によってエドモントンが発達したことも知った。

 エドモントンはこの河の河床に出来た毛皮取引所として誕生、出発した。

 明日の夜、陽一は白木和雄と十七年ぶりに会う。白木とロッキー山脈をキャンプして回り、川や湖で鱒釣りをする約束になっている。英国製の七つ折りの釣竿もスーツケースにしのばせてある。

 やがて、河を挟んで一塊りのビルが見え、両側に碁盤の目に道路の走った街が見えだした。桝目の中の緑が濃いのは、それぞれの住宅に樹木が豊富なためらしい。

 「あまりきれいな街じゃないのよ」

 アムステルダムから、二席しかない最後尾の席で隣り合わせになった娘は、小柄な金髪で、飛行中ずっと日記らしいものを書き続け、ときどき花模様のワンピースの背中に手を入れてボリボリ搔き、陽一に飴玉をくれたりした。

 エドモントンの工芸学校でデザインを勉強しているということだった。カナダの生活はオランダと比べてどうですか?と訊くと、

 「人間関係が冷たいワ。ヨーロッパみたいに伝統や文化が共通で、少しの言葉で信頼し合えるのと違うのよ。みんなお金のことしか話さない」

 「料理は?」

 「お砂糖をいっぱい使った甘いお菓子を良く食べるわよ」


(つづく)

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