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2011年3月12日 (土)

夏の山脈 7

 ジミーが引っ込み、今度は女の子が出て来た。台所に立って何か飲み物はない?と辻さんに訊いている。雪のように白い肌にバラ色の頬をした女の子だ。フランボワーズのシロップのかかったクリーム・シャンテイを見るときのような甘い気分に誘われる。

 これが辻さんの同棲相手だろうか?さすが芸術家だけあって、こんな初々しい華やかな女の子をパートナーに連れ添ってるのか?一瞬、言葉に詰まり、消え入るような挨拶しかできなかった。

 「ずいぶんお若いんですね
~、辻さんの彼女って」

 「やだなあ~。これは彼女の娘ですよ。十四にしては胸も張って成熟して見えるけど、まだまだ、ねんねえやで。なあ、ジャメイ。ぼくの彼女はもっとどっしりした女ざかりのレデーやで」

 子供たちが行ってしまった後、辻さんはビールのお代わりを抜いてくれ、ふと釣りの話をした。

 「ここから、北の方に五十キロほど行ったところに池があって、パイクとかマスキーとかパーチとかがよく釣れるよ」

 「こないだ初めて、パイクを釣ったんですよ。四十センチくらいの制限ぎりぎりのやつでしたが。うれしかったですね」

 「ここじゃあルアー入れたら七・八十センチのパイクがいやいうほど食いついてくるよ。釣りするんやったらやはりレインボーやね。白木が、どうするかな、ロッキーに行って、四・五日遊んでくるかな、言ってたから、たぶん連れてってくれるでしょう。山の湖にはレインボー・トラウトの大きなのがいるよ。これは、きれいな魚。腹に紅い線があってね。

 レインボーがかかるとジャンプするからね。それは楽しいよ。わざと細めの糸使って、切られんように上手にあげるのが、腕のみせどころ。ぼくはいつもマシュマロつけて釣るの」

 「マシュマロ?」

 嚙むと泡のような音を立て、白やピンクの張りと弾力あるお菓子が陽一の眼に浮かんだ。

 「マシュマロに臭いがあるでしょう。それに浮くから、ミミズを目立ちやすいようにしてくれるんや」

 「なんか、とっても北米的な釣り方ですね……。もっと釣りの話を聴かせて下さい。竿もちゃんとスーツケースに入れて来たんです」

 「へえ~。キミ、釣り好きなの?日本人やねえ。やっぱり」

 辻さんは、皮肉交じりともとれる言い方で言った。

 「ボクは釣りするとなったら、一日腰据えて釣るからね」

 「レインボーはどうやって釣るんですか?ルアー?浮釣りですか?」

 「錘をつけて飛ばすのよ。百メーターは飛ばさなあかんね。糸をピンと張って、あとは魚が食いにくるのを待つだけよ。

 魚が食ったらグーッと竿がしなうからね。竿を立てといてほかのこともできる。竿の先に鈴つけといたらええね。寝転がって本読んでてもええ。

 釣ったばかりのレインボーを火で炙って塩焼きにしたらうまいよお~」

 (つづく)

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こちらの小説も楽しみです!

投稿: ゆっきー | 2011年3月15日 (火) 04時04分

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