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2011年4月12日 (火)

レクイエム 29

 「そうでしょう。デカルトはキリスト教の霊肉二元的人間観の伝統を受け継
いでるようですね。でもデカルトの心身二元論から心身平行論が生まれ、や
がて人間機械論に行き着くわけでしょう」僕はつっこむ。

 「人間の心は死後、物質の外で実存しかつ作用する。だから人間の心は物質
に依存しないのよ。アリストテレスは、悟性は非身体的で、感覚と違い、身
体から分離されている、と言ってるわ」ルイーズ先生は若いころからの自明
のことのように言った。

 「東洋の物心一如という表現は、われあり故にわれ思う、と言い換えられる
ように思うんです。」僕は思い切って言った。

 「それは人間の本質は意識作用の主体であることではなくて、身体の生理的
作用が人間の最も本質的な存在規定だということですか?」

 ルイーズ先生にかかると厳密な哲学的思考を強いられるので僕はたじたじと
なる。

 「精神とか魂の宿る場所としての肉体をもっと重視していいんじゃないかと
思うので、故意にデカルトのテーゼを逆転してみたんですがね」僕は笑い
ながら言った。

 「心や精神や魂は物質とは別とはっきりと言い切ることが大切よ。近代合理
主義の産みの親のデカルトは、精神と物質をはっきりと分け、空間に延長を
もつ物質は分割できるから科学の対象にし、分解できない心とか精神とか魂
は科学では扱わないことにしたのよ。ただデカルトは脳の松果体で精神が身
体と働きあっているという説を立てたから、精神と物質に相互作用があるか
もしれないという、現代哲学や心理学、ニューサイエンスに繋がる発想をし
てるように思うわ。魂とか霊の存在を考える最近のこれらの学問の傾向は近
代科学の前提そのものが疑われ始めたことを示しているのよ」


 (つづく)

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