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2011年4月14日 (木)

レクイエム 31

 「デジャヴュというのは前世の記憶なのでしょうか?人間が美しいものに憧
れるのも魂が人間に降りてくる前にイデアの世界に住んでいたからとプラト
ンは言ってますね。現実にはありえない点や線や円を考えられるのも魂がイ
デア界に住んでいたからですかね?」僕は長年の疑問を口にした。

 「プラトンの説はホモの世界で通用することだわ。イデアの超越的実体説は
間違いよ。そんな幻想で結びついてるのが男の世界なのよ。形相(エイドス)
は質料において内在・実現するといったアリストテレスに真実があるの。世
界を良く見てごらんなさいよ。無限の具象で成り立っていて抽象的な線や形
は存在しないじゃないの」

 ルイーズ先生は断言した。男の世界にはそうとう遺恨をもっているらしい。
幾何の定義に疑問を抱いた僕と基本的には同じ認識なので僕はうなづいた。
「お釈迦さんは生きとし生けるものはすべて死す。一切が非我であり無常で
ある。生存欲を断ち、生命のままの姿を認め浮世で尊ばれている価値や倫理
など相対的なものと観ずる時に解脱出来ると説いたわね。でもすべてをある
がままに認めよというのが仏教なら仏教は何も教えていないことになるわ。
ある仏教学者によればお釈迦さんは、我とはなにか、世界は時間的に有限で
あるか無限であるか?霊魂と身体は同じであるか否か?といった問いには答
えなかったそうね。捨置答とか無記とか言われてるらしいけど……」
ルイーズ先生の仏教についての知識も相当なものだ。

 僕は高校生の時に幾何の定義に疑問を持って質問したのに先生が答えなかっ
たことを思い出した。ただ、少し仏教を弁護したい気持ちになり、「こうし
た根源的な疑問は各人が自分で答えを見出すしかないということなのでしょ
うかね」と言った。

 「この世の苦しみの根源は無常なものを永遠のごとく思い誤る魂の主観作用
にあるという考えが仏教にはあるようね。苦しんでる人間に苦しみの根源は
生存欲にあるのだからその欲望を断てというのでは自殺を奨励するようなも
んじゃないかしら。日本には昔からサムライの切腹や神風特攻隊があったわ
ね」ルイズ先生がさらに辛辣な批判を仏教に向ける。

 (つづく)

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