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2011年4月20日 (水)

夏の山脈 9

 最初に訪ねた旅行会社では、その日付の便は一か月前から満席ですと言われた。

 正規のチケットを買えるほどの家計の余裕はなかったから、チャーター便を探した。

 一週間先のチャーター便に空席を見つけるのは無理かもしれなかった。諦めず電話帳を探すと、カナデアン・ナショナルという旅行代理店が見つかった。電話では予約は受け付けません。オペラ座のすぐ近くにオフィスがあるから来て下さいという。

 行ってみると応対に出たのはいかつい顔をした大きな男だった。希望の出発日を言うと、驚いた表情を作り、ヒューと口笛を鳴らしたが、すぐ航空会社に問い合わせてくれた。長々と話した後、キャンセル待ちならあると言ってくれた。

 明日わかるから電話をくれないか、というので翌日電話したが、まだコンファームできないと言った。「来週になると思うよ。はっきりするのは」

 翌週の水曜日が出発希望日だったが、最後まで行けるか行けないかわからない。仕事もある。行けるとなったら前日に十日の休暇を申請することになる。キミは仕事を放り出して遊びに行くのか?無責任じゃないかね。前日に十日の休暇願じゃ代わりの人のスケジュールも組めないよ。承認できないね。課長の不機嫌な顔が見えるようだ。

 どうするか?こじれるな、これは。いずれにしても。いよいよ決別か……今の仕事とも……。

 次の日曜日、白木から電話が掛かって来た。「ハワイの仕事が早まってな。あさってすぐ行かにゃならんのよ。八月の十日には帰ってくるけど……え?すると、キミも八月の下旬のほうが都合がいいわけ?ほんならどっちもちょうどええね」

 白木は仕事が遅れることはまずないだろうと言ったが、陽一は余裕を見て十三日出発の便を申し込んだ。今度は問題なくOKだった。会社には十五日間の休暇願いを出した。「ずいぶん長い休暇をとるねえ」マネージャーは皮肉ったが、この旅行は友情のためで何を置いても行く積りですと決意を匂わせた。三日後、夏休みを許可しますと返事を貰った。

(つづく)

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