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2011年4月16日 (土)

レクイエム 33

 小型飛行機は鎌倉あたりの海岸から離陸することになっている。団体客に混
じり電車で移動する。海岸を歩いて飛行機に乗りに行く。飛び立った飛行機
の窓から青い海辺のあちこちに水浴客や釣り人の姿が見える。真近に見える
男が竿を振って投げた浮きが水に潜り、ゆっくり立つのが見えた。

 うしろを向くと友人が見え、その背後に黒人が二人座っている。飛行機には
四人の乗客しかいない。山の傾斜を飛行機は上昇してゆく。突然、黄色い遂
道の中を歩いている。高さ五メートル、巾一メートルほどの楕円形のトンネ
ルだ。壁の全面がムギワラで覆われて、どこからか射す光がトンネルの内部
を全体に黄金色に明るませている。

 いままで飛行機に乗っていたのになぜ突然こんなところにいるんだと思った
とたんまた飛行機に座っていた。なぜあんなトンネルにと思った瞬間また黄
色いトンネルを歩いている。こんどは前よりも狭い。先をゆく友達は小柄で
すいすい登ってゆくのに広い肩が両側の壁に触れてしまう。遂道が次第に狭
まってゆくのが感じられる。もう前を向いたままでは進めず横を向いて歩か
ねばならない。顔を壁につけるようにして一歩一歩長いトンネルを蟹のよう
に横這いに進まねばならない。ああ、前進も後戻りもできなくなってしまっ
た。胸と背が両側の壁にくっつき息苦しい。

 無限に長いトンネルの中を進むしかないと思い込む。あと数歩も進めば身
動きがとれず穴の中で完全に行きづまってしまうという恐怖に喉と胸が締め
あげられ額に苦悶の汗が滲み出る。
 もはや後戻りはできず進むしかないと思い込み、一息吸い込むと身体を緊張
させ右肩を前へ進めた。胸と背が壁に圧される。それでも腰を入れ、身体全
体をぐっと押し出す。今度こそ身体全体が狭隘な壁にしっかりと捕らえられ
た。息を吸うのがむずかしく意識が次第に遠くなる。暫くの間、気を失って
いたようだ。


 (つづく)

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