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2011年4月10日 (日)

レクイエム 27

 もう十五年も前になるが、ジャンヌに子供が出来かけた。胎児と一緒に子宮
筋腫が大きくなった。ジャンヌは泣き、母親と婦人科医に相談し堕ろしてし
まった。ジャンヌの胎内に宿った微細な生命に分身が出来たと喜んだ僕は、
堕ろしたと聞いた時、心の底から彼女を憎んだ。

 激しい口論の末、彼女は、ふたりとも若いころ子供は作るまいと思ったのだし、
結婚の目的は子供を作るためじゃなかった、子供と私とどちらが大事かと迫った。

 ジャンヌは夫婦の愛情が子供に移るのは嫌だという。子供のために犠牲になるのも嫌だと言った。その場は僕は子供への執着を捨てた。それでも遺伝子を子に伝え僕という個我を持続させたいという欲望は、子が出来かけたのをきっかけにむくむくと膨らみ、折からの米中ソの融和、核削減に向けた進行が人類に希望と
平和を齎すかに見え、状況が変わった、と思わせ、ジャンヌと別れ他の女を
見つけて子供を作ろうとさえ思った。父は賛成し、そうするがいいと言った
が、母は小声でジャンヌと一緒にいなさいと言った。

 (つづく)

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